放課後のマクドナルドは、学生や会社員でいつもより混み合っていた。
その中で、制服姿の女子高生が一人、レジの前に立った。
彼女は少し緊張した様子で財布を握りしめ、店員に向かって言った。
「アイスコーヒーを十八個お願いします」
店内が一瞬、静かになった。
店員も思わず聞き返した。
「十八個、ですか?」
女子高生は小さくうなずいた。
どうやら部活動の差し入れらしく、顧問の先生や先輩たちに頼まれて買いに来たらしい。
しかし、十八個もの飲み物を一人で持って帰るのは簡単ではない。
紙袋に入れても重く、カップホルダーを重ねても不安定だった。
後ろに並んでいたおばあちゃんは、その様子をじっと見ていた。
女子高生が両手いっぱいに袋を抱えようとした瞬間、おばあちゃんが静かに前へ出た。
「お嬢さん、それ全部一人で持つの?」
女子高生は慌てて笑った。
「大丈夫です。近いので」
けれど、声とは反対に、手元は明らかに震えていた。
するとおばあちゃんは、自分の注文を後回しにして店員に言った。
「すみません、この子が持ちやすいように、袋を分けてもらえますか。あと、私も途中まで一緒に持ちます」
女子高生は驚いて何度も断ったが、おばあちゃんは笑って首を振った。
「若い子が困ってるのを見て、知らん顔するほど年は取ってないよ」
その一言で、周囲の空気が少し柔らかくなった。
近くにいた会社員も「一袋持ちますよ」と声をかけ、店員もすぐに袋を補強してくれた。
結局、十八個のアイスコーヒーは、何人かの手で無事に運ばれていった。
女子高生は店の外で何度も頭を下げた。
おばあちゃんはただ笑って言った。
「誰かに助けてもらった日は、今度はあなたが誰かを助ければいいの」
たった十八個のアイスコーヒーが、店内にいた人たちの心まで少し冷たく、そして優しく潤した出来事だった。