母はずっと「食堂で働いてる」と言っていた。
夕方に家を出て、深夜タクシーで帰る毎日。
でも朝には必ず私より早く起きて、豪華な朝ごはんと作り置きの夕飯を用意してくれた。
中学から私立、大学の一人暮らしも仕送りあり。
「このお金、どこから?」と思いながらも聞けなかった。
就職後、飲み会の店を探していた時、あるブログを見つけた。
「下町のスナック。ママのポテトサラダが絶品」
材料が、母の味とまったく同じだった。
検索すると、そこにいたのは母だった。
「ママって、スナックのママなの?」
そう聞くと、母は笑った。
「あちゃー、バレたか」
父は養育費も払わず消え、母は私を不自由なく育てるために店を始めたという。
週末、初めて店に行くと、常連さんが泣きながら言った。
「これが、あの赤ちゃんか」
知らない場所で、私はずっと愛されて育っていた。