幼い子を残して、親友の奥さんが乳がんで亡くなった。
葬儀から数日後、親友から電話が来た。
「助けてくれ。何をすればいいのか分からない」
声は震えていて、もう限界なのが分かった。
急いで家に駆けつけ、玄関を開けた瞬間、私は涙が止まらなくなった。
部屋は荒れているどころか、きれいに整えられていた。
冷蔵庫には一週間分の献立。
棚には子どもの服が曜日ごとに分けられ、机には「パパへ」と書かれたノート。
そこには、保育園の準備、薬の飲ませ方、泣いた時の抱きしめ方まで細かく書かれていた。
最後のページには、震える字でこうあった。
「私がいなくても、この子が寂しくならないように、どうか笑って育ててください」
親友はその場で崩れ落ちた。
奥さんは最後の最後まで、母親だった。