駅前のマクドナルドの出入り口には、いつも騒いでいる高校生グループがいた。男子三人、女子二人の五人組で、膝の上に女子を座らせ、大声で笑いながら騒いでいた。まるで居酒屋のような空気で、通る人たちはみんな迷惑そうな顔をしていた。
その日、私はバイト帰りにたまたま店の前を通りかかった。すると、店の中から女性店員が出てきて、高校生たちに静かに声をかけた。
「他のお客様から苦情が来ていますので、やめてもらえませんか?」
しかし、高校生たちは店員を見上げると、ニヤニヤしながら言い返した。
「は?何をやめるの?」「アンタ何様?」
店員は表情を崩さず、「営業妨害になりますので」と説明した。すると今度は、高校生たちの態度がさらに悪化した。
一人の男子がスマホを振りながら言った。
「むかつくー。アンタの写真撮ったし」「友達にばら撒くし」
別の女子も笑いながら続けた。
「帰り道、何かあっても知らないよ~?」
その瞬間、空気が一気に張り詰めた。
周囲にいた人たちも足を止め、様子をうかがっていた。
すると、その時だった。
近くの花屋のおばちゃんが、店先から勢いよく出てきた。手には花に水をやるためのひしゃくを持っている。
おばちゃんは高校生たちを睨みつけながら怒鳴った。
「あんたら毎日毎日うるさいんじゃ!家帰れ!!」
そのまま、ひしゃくの水を高校生たちの足元へ勢いよくぶちまけた。
高校生たちは一瞬ひるんだ。しかし次の瞬間、今度は花屋のおばちゃんに向かって詰め寄ろうとした。
すると、それを見ていた通勤途中らしい男性たちが、一斉に声を上げた。
「ゴラァ!!」「帰れ!!」「アホか!!」「クソして寝ろ!!」
全員知り合いでも何でもない。ただ、その場にいた大人たちが同時に怒鳴ったのだ。
突然の怒号に、高校生たちは完全に怯んだ。顔を引きつらせながら、そのまま逃げ出していった。
しかも、逃げた男子の一人はズボンの股間が濡れていた。恐怖で漏らしたのだろう。
騒ぎが収まると、店員のお姉さんは何度も頭を下げていた。
花屋のおばちゃんは「まったくもう」とぶつぶつ言いながら店へ戻っていった。
駅前の小さな騒動だった。けれど、あの時そこにいた大人たちの空気は、不思議なくらい一つになっていた。