仕事帰りに家へ向かうと、玄関前に七歳の孫・律が一人で座り込んでいた。
顔には白いまだらが広がり、目は泣きはらして真っ赤だった。
私は慌てて律を家に入れ、何があったのかを聞いた。
すると律は、皮膚の病気になったせいで父親の和樹と母親のマリアに捨てられた、と震える声で話した。
私はすぐに和樹へ電話をかけたが、返ってきたのは「病気のガキでも毎日一緒に暮らせるなんて幸せだろ」という嘲るような言葉だった。
マリアまで「うつったら嫌だから、年寄りが育てろ」と笑いながら言い、電話は一方的に切られた。
私は震える律を抱きしめながら、もう自分が育てるしかないと覚悟を決めた。
調べると、律の病名は難病ではなく、子どもによくある皮膚の病気だった。
私は律に「治る病気だから大丈夫」と伝え、一緒に暮らし始めた。
それから九年、律は十六歳になり、発明の才能を伸ばして特許まで取得する高校生に成長した。
私は定年後の年金と退職金で律を支え、二人で穏やかに暮らしていた。
そんなある日、九年前に消えた和樹夫婦が突然やって来た。
テレビで律の特許取得を知り、金になると踏んで現れたのだ。
和樹はわざとらしく「迎えに来たぞ」と言ったが、律は冷たく「誰だよお前」と突き放した。
さらに私が、あの病気は難病ではなく、とっくに治っていると告げると、二人は態度を一変させ、「なんで言わなかった」「子どもを返せ」と喚き始めた。
律はすぐに警察へ通報し、騒ぐ二人は追い返された。
その後、私は和樹の友人・春彦とともに和樹夫婦の家を訪ねた。
二人は昔、律の難病を口実にして春彦たちから金を借り、踏み倒して失踪していたのだ。
私は置き去りの本当の理由が借金逃れだったことを突きつけた。
春彦も「集団訴訟を起こす」と告げ、和樹夫婦を追い詰めた。
やがて二人は訴えられ、一軒家も失った。
私は家と土地を売って律の高校近くへ引っ越し、完全に縁を切った。
さらに弁護士に相談し、律と養子縁組を結んだ。
実の親ではなく私を選んでくれた律を見て、私は心から思った。
この子を守り抜いてきて、本当によかったと。