朝の満員電車で、女性が痴漢に襲われるのを目撃した。周りは見て見ぬふり。俺は黙っていられず、男の腕を掴んで「やめろ!」と叫んだ。男は怯んだが、すぐに混雑に紛れて逃げる。女性は震えながらも小さく頭を下げた。
駅員に事情を説明して女性の安全を確認していたら、時計は午前10時。会議に大幅遅刻してしまった。会社に戻ると、上司の江藤部長は資料を叩きつけ、「お前クビだ!」と怒鳴る。事情を説明しても信じてもらえず、心が重く沈む。
冷たい視線と怒声に押されながら、俺は辞表を握り役員室へ向かう。廊下を進む足は重いが、胸は堂々と張っていた。扉を開けると、川瀬専務が立っていた。朝助けた女性の父で、感謝の言葉をくれる。「あなたの行動は業務を超えた勇気です」
驚いたことに、助けた女性は専務の娘だった。部長の横暴も明るみに出て左遷となり、俺は社内で評価を大きく上げた。専務と娘との関係も良好になり、公私ともに幸せな日々が始まる。
ほんの短い瞬間の行動が、人生を大きく変えることがある――あの朝、俺はそれを身をもって知った。