その瞬間、空気が一気に変わった。
家族でいつものキャンプに来ていた。
火を起こして、食材を準備して、
いつも通りのゆるい時間。
正直、それが一番好きだった。
私は炭を見ながらビールを開けて、
「これだよな」って思ってた。
そのすぐあとだった。
変な笑い声が聞こえた。
振り向いたら、明らかに酔ってる男のグループ。
嫌な予感しかしなかった。
そして、その予感は当たった。
その中の一人が、娘たちに目をつけた。
「いいじゃん、こっち来いよ」
そのまま距離を詰めてきた。
娘たちは困った顔をして、
「やめてください」
ちゃんと断った。
でも男は止まらない。
次の瞬間——
腕を掴んだ。
「ちょっとくらいいいだろ」
その一言で、全部切り替わった。
娘の声が聞こえた。
「お父さん!」
その瞬間、体が勝手に動いてた。
考える前に、もう動いてた。
一気に距離を詰めた。
「手、離せ」
低い声が出た。
自分でも分かるくらい、空気が変わった。
男が振り向いた瞬間、
横から妻の蹴りが入った。
その隙に、私は正面から押し込んだ。
そのまま地面に叩きつける。
「ぐっ…!」
完全に体勢が崩れた。
そのまま押さえ込む。
逃げられない状態。
さっきまでの軽さは消えてた。
周りも一気に静かになった。
妻はすぐに娘たちを抱き寄せていた。
「もう大丈夫」
娘たちは震えてた。
それ見た瞬間、正直ちょっと遅れて怒りがきた。
「……何してんだよ」
男は何も言えなくなってた。
さっきまでの余裕ゼロ。
しばらくして、管理人が来た。
さらに男の連れも来た。
顔色変えて謝ってた。
「本当にすみません」
正直、どうでもよかった。
一つだけ言った。
「謝るなら、こっちじゃない」
娘たちに頭を下げさせた。
それで終わりにした。
騒ぎが落ち着いたあとだった。
娘たちがこっちを見て言った。
「……今の、本当にお父さん?」
「ちょっと待って、動きおかしくない?」
「普段の感じと違いすぎなんだけど」
……は?
褒めてるのかディスってるのか分からない。
妻が笑いながら昔の写真見せた。
「これ若い頃」
娘たち爆笑。
「誰これ!?」
「別人じゃん!」
いや失礼すぎる。
でも、そのあと一言。
「お父さん、痩せたらまたいけるよ」
その瞬間、スイッチ入った。
「やるわ」
って即答した。
その日から、本気で絞り始めた。
今でも思う。
あの瞬間、体はちゃんと覚えてた。
でもそれ以上に思う。
守るものがあると、人ってちゃんと動ける。