俺の名前は田中純樹、37歳。
妻の紗と結婚してから穏やかな生活を送っていたが、子供にはなかなか恵まれなかった。
検査では異常はなく、ようやく妊娠が分かった時、俺たちは涙が出るほど喜んだ。
だが、出産後すぐ、我が子に障害があることが判明した。
俺も紗も深く傷つき、しばらく前を向けなかった。
それでも少しずつ気持ちは落ち着き、夫婦で散歩をする日々を送っていた。
そんなある日、妹から突然連絡が入った。
家へ戻ると、不機嫌そうな妹と、小さな女の子が立っていた。
「どうした?」
俺が聞くと、妹は冷たく言った。
「子供欲しいって言ってたでしょ?この子、あげる」
妹は再婚相手の連れ子を育てていたが、その子に障害があると分かり、育児を放棄したのだ。
「名前はセーラ。あとはよろしく」
妹はそう言い残し、去っていった。
俺と紗は震えるセーラを抱きしめた。
言葉は少し遅かったが、感受性の強い優しい子だった。
やがて正式に養子となり、俺たちは愛情を込めて育てた。
成長したセーラは絵に才能を見せ、美術館やギャラリーへ通うようになった。
その才能は次第に注目され、企業からスポンサーの話まで来るようになった。
すると10年後。
突然、妹夫婦が家へやって来た。
妹の夫は目を逸らしながら言った。
「セーラを返してほしい。あの子の絵で生活を立て直したいんだ」
俺は静かに答えた。
「セーラはもうお前たちの子じゃない。返す気はない」
妹夫婦は何も言えず帰っていった。
数日後、妹から手紙が届いた。
自分の過ちを認め、これからは真面目に生きると書かれていた。
その後、セーラは海外で学ぶことになった。
今でも時々連絡をくれる。
俺と紗は、血の繋がりなんて関係ないのだと心から思っている。
セーラが幸せなら、それだけで十分だった。