受け取った袋は一つ。
中にはハンバーガーとポテト。
──ジュースがない。
「まあ後で持ってくるだろう」
そう思ったのが、最初の間違いだったのかもしれない。
1分、2分。何も来ない。
車の中で待っているうちに、じわじわと違和感が怒りに変わっていく。
「いや、気づいてるなら持ってこいよ」
そう思った時にはもう、自分の中では“事件”になっていた。
店内へ行くと、あっさりした対応だった。
「オレンジジュースですよね?」
その一言で、何かが切れた。
(いや、そういう問題じゃないだろ)
渡し忘れたなら、走って持ってくるのが普通じゃないのか。
ドライブスルーの意味はどこに行った。
気づいたのに放置されていた事実が、どうしても許せなかった。
気づけば声が大きくなっていた。
責任者を呼べ。謝罪じゃなくて説明をしろ。
店のルールとしておかしいだろ。
店員はただ困った顔をしているだけだった。
その反応がさらに火に油を注いだ。
「じゃあどう責任取るんですか?」
気づけば、過去に聞いた“補償の話”まで持ち出していた。
頭の中ではもう、正義と理屈しか残っていなかった。
最終的に、無料券の話が出たところでようやく収束した。
車に戻ったとき、店の中の視線がまだ残っていた。
そこで初めて気づく。
俺が戦っていたのは、ジュースの有無じゃなかった。
“自分が正しいかどうか”だけだった。
ドライブスルーは普通に終わっていたはずだったのに、
気づけば一番遠回りしたのは自分のほうだった。