うちの子は年少で、幼稚園に入ったばかり。
週3回のお弁当の日は、少しでも食べやすいようにと毎回工夫して作っている。
小さな手でも食べられるように切ったおかず。
好きなキャラクターのおにぎり。
朝からバタバタしながら、それでも少しでも楽しい時間になればと思って続けてきた。
そんなある日、突然電話がかかってきた。
「うちの子が意地悪されて、おかずをもらえなかったって泣いてるんですけど!」
一瞬、意味が分からなかった。
うちの子が何か壊したのかと思って謝りかけたが、話を聞くうちに違和感が積み上がっていく。
その子は最初から“おにぎりだけ”だったという。
つまり、おかずをもらえなかったのではなく、そもそも持ってきていなかった。
さらに驚いたのは、その後の言葉だった。
「節約してるだけなのに、可哀想じゃないですか?」
なぜそれが、うちの責任になるのか分からなかった。
私はその件を担任の先生に相談した。
お弁当の内容は家庭の自由だが、子ども同士の“当たり前の分配”にしてしまうのは違うと思ったからだ。
先生も状況を理解し、その家庭に注意をしてくれた。
その時は、それで終わったと思っていた。
ところが翌日から、空気が変わった。
帰宅すると、玄関前にその子が一人で座っている。
「お母さんが忙しいから、ここで待っててって言われた」と言う。
最初は偶然かと思った。
でもそれが何度も続いた。
先生に連絡すると、その家庭は「預けてない」の一点張りだった。
つまり、放置だった。
節約のためにお弁当を削るのは自由かもしれない。
でも、それを理由に他人に負担を押しつけるのは違う。
そして、注意された“仕返し”として子どもを使うのは、もっと違う。
今、夏休みを前にして一番怖いのはお金ではない。
あの子がまた、うちの前に置かれることだった。