旦那とちょっと喧嘩して雰囲気悪くなったら、いつもの如く
「家の貯金通帳ちょうだい。生活費は今後は折半ね。」
って言われて、まーた始まったわと思った。
今までは面倒だから流してた。
でも今回は違った。
私は黙って通帳を渡した。
旦那は一瞬驚いた顔をした。
たぶん私が慌てたり反論したりすると思っていたんだろう。
私は笑顔で言った。
「いいよ。」
「その代わり生活費折半なら、家事育児も折半でお願いね。」
旦那は少し顔をしかめた。
私は続ける。
「明日から子供を保育園に送って行ってちょうだい。お迎えは私が行くから。」
「子供が体調不良の時は交互に有給ね。この前は私が休んだから次はあなた。」
「離乳食ストック作りもお願いね。」
「爪切りとか耳掃除とか保育園の連絡帳とか予防接種の予約も半分ずつ。」
「あと夜泣き対応も当然折半ね。」
旦那は黙っていた。
でも強気だった。
「別にそれくらい出来るし。」
私は心の中で笑った。
翌朝。
旦那は開始15分で心が折れ始めた。
子供は服を着ない。
オムツ替えを嫌がる。
保育園バッグの場所が分からない。
水筒の準備も知らない。
保育園に着く頃には既に汗だくだった。
その日の夜。
旦那は帰宅してソファに倒れ込んだ。
しかし育児は終わらない。
ご飯。
お風呂。
歯磨き。
寝かしつけ。
夜泣き。
翌日には保育園から電話。
「お子さん発熱です。」
私は旦那を見た。
旦那も私を見た。
私はニコッと笑った。
「今回はあなたの番だよ。」
旦那は有給を取って迎えに行った。
病院。
薬。
看病。
抱っこ。
ぐずり。
ご飯拒否。
寝不足。
翌日の旦那はゾンビみたいな顔になっていた。
それでも私は何も言わない。
だって折半なんだから。
その後も一週間。
二週間。
旦那は少しずつ現実を知っていった。
洗濯機は勝手に回らない。
保育園の書類は勝手に提出されない。
子供の爪は勝手に切られない。
家の中のことは誰かが毎日やっている。
そして、その誰かは今までずっと私だった。
ある日の夜。
私はテレビを見ていた。
すると後ろから物音がした。
振り返る。
そこには正座している旦那がいた。
いや。
正座どころじゃない。
土下座だった。
私は吹き出した。
「何してるの?」
旦那は真顔だった。
「お願いがあります。」
「なに?」
旦那は深々と頭を下げた。
「家計管理も家事も、今まで通りお願いしたいです。」
私は大爆笑した。
「え?生活費折半は?」
旦那は首を振る。
「無理です。」
「家事育児折半は?」
「もっと無理です。」
「じゃあ通帳は?」
旦那は両手で差し出した。
「返します。」
私は笑い過ぎて涙が出た。
旦那は続けた。
「今まで俺、自分が働いて家に金入れてるから大変だと思ってた。」
「でも家のこと全部回してる方がもっと大変だった。」
「ごめん。」
珍しく素直だった。
私は通帳を受け取った。
そして一言だけ言った。
「分かった。」
「でも次に喧嘩した時、生活費折半って言ったら家事育児完全担当ね。」
旦那は即答した。
「二度と言いません。」
こうして我が家から『生活費折半カード』は永久に消滅したのである。