その日、私は買い物を終えて車に戻った。
フロントガラスのワイパーに、見慣れない紙が挟まっていることに気づいた。
「間違えてあなたの分を精算してしまいました。」
一瞬、意味が理解できなかった。駐車料金か何かのトラブルだろうかと考えながら、そのメモを手に取った。
しかし、続きの文を読んだ瞬間、私は思わず息を呑んだ。
そこには、こう書かれていた。
「本来は別の車両の精算でしたが、すでに処理済みです。差額については……」
私はその先を読み進めることができず、しばらく固まってしまった。
“間違い”という言葉で済ませるには、あまりにも不可解な内容だったからだ。
車内に戻り、メモを何度も読み返す。だが、意味は変わらない。
誰が、何を、どの精算で間違えたのか。
その時だった。スマートフォンに通知が入る。
駐車場管理会社からのメッセージだった。
「先ほどの件につきまして、確認したい事項がございます」
胸の奥がざわついた。
私はすぐに電話をかけ直した。
担当者は開口一番、妙に緊張した声で言った。
「実は……精算データに不自然な履歴が残っていまして」
その言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
ただの“間違いメモ”ではない。
そこには、何か別の意図、あるいは想定外の処理ミスが潜んでいる可能性があった。
ワイパーに挟まれた一枚の紙は、単なる伝達ではなく——
“何かの始まり”だったのかもしれない。