前の会社の退職理由を正直に話したのは、面接の場だった。
私は過去の経験を簡潔に説明し、なぜ転職を決意したのかを伝えたつもりだった。しかし、面接官は少し間を置いた後、静かにこう言った。
「もしウチの会社がそうだったら、また辞めるんですか?」
空気が一瞬、重くなった。
挑発とも試験とも取れるその質問に、私は言葉を選ぶ必要があった。
周囲の面接官も私の反応を待っている。沈黙が続く中、私はゆっくりと口を開いた。
「逆にお聞きしますが……」
面接官の視線がわずかに動く。
「“同じ状況”とは、具体的にどの部分を指していますか?環境、評価制度、それとも人間関係でしょうか」
その問い返しに、面接室の空気が変わった。
私は続けた。
「もし同じ問題が発生するなら、辞めるかどうかではなく、“改善できる環境かどうか”をまず判断します」
感情ではなく、事実ベースでの答えだった。
面接官は一瞬黙り込み、資料に目を落とした。
しばらくの沈黙の後、彼は小さく息を吐きながら言った。
「なるほど……」
その表情には、最初の“試すような圧”はもうなかった。
面接はその後も続いたが、空気は明らかに変わっていた。
そして最後に告げられた言葉は、予想とは違うものだった。
「ぜひ、次の選考に進んでください」
その瞬間、私はこの面接が“質問”ではなく“見極め”だったことを理解した。