高級寿司店で、孫が「タマゴをください」と頼んだ瞬間だった。
隣のスーツ姿の男が舌打ちし、「卵ばっかり頼むな。ここは貧乏人が来る店じゃない」と吐き捨てた。
私は鈴木英子。地元で三十五年続く「スーパー鈴木」の副社長だ。その日は孫娘もえを連れて、昔から付き合いのある寿司店に来ていた。もえは大将の卵焼きが好きで、三回続けてタマゴを注文しただけだった。
しかし男はさらに怒り、「スーパーの寿司でも食ってろ」と罵ったあげく、突然もえの頭からお茶をかけた。店内は騒然となり、男は一万円札を投げて逃げていった。
私はその銀行の支店長に連絡した。実は私たちは三十億円近い預金を持つ大口顧客だった。
数日後、男が再び店に現れた。私は隣に座り同じ寿司を注文したが、それは実は私のスーパーの寿司だった。得意げに食べていた男は事実を知り絶句する。
そこへ銀行の支店長が現れ、動画で事件を確認。
男は土下座したが、私は静かに言った。
「孫にしたことは消えません」
私たちは口座を解約し、被害届も提出した。
今も月に一度、もえと寿司を食べに行く。
「今日は何食べたい?」
「タマゴ!」
笑顔で好きなものを食べられること。
それこそが、本当の“高級”だと思っている。