
年末の新幹線は、とにかく混んでいた。
だから私は、きちんと指定席を予約していた。
ようやく車両に入り、自分の席番号を確認する。
――するとそこに、若い父親と小さな子どもが座って眠っていた。
「すみません、ここ私の指定席なんですが。」
そう声をかけると、父親は少し不満そうな顔で言った。
「え?ここ自由席ですよ。」
私は黙ってチケットを見せた。
「指定席です。」
父親はため息をつきながら言う。
「でも子供が寝てるんですよ…。」
正直、心の中では
(知るか)
と思った。
私だって立ちっぱなしで移動したくないから、
ちゃんと指定席を取っている。
「申し訳ないですが、私の席なので。」
そう言うと、父親は渋々子供を抱えて席を立った。
そして別の席を探しに行った。
私はようやく座り、ホッとした。
――と思ったら、発車直前。
その親子がまた戻ってきた。
父親は少し苛立った顔で言った。
「ほら!自由席空いてるじゃないですか!」
通路の向こうを指さしている。
でも私は淡々と答えた。
「ありがとうございます。でも私は指定席を予約しているので。」
父親は何も言えなくなり、
そのまま自由席の方へ戻っていった。
新幹線は静かに発車した。
窓の外の景色を見ながら思った。
指定席って、
「優しさで譲るかどうか」じゃない。
最初から、
誰かがちゃんとお金を払って確保している席なんだ。