居酒屋で、常連のおじさんがみんなから「キリンさん」と呼ばれていた。
最初は、たしかに首が長いからかと思った。
でも話す声が低くて渋く、冗談の間も絶妙。
「あ、芸人の麒麟っぽいからか」と勝手に納得した。
ところが次の瞬間、おじさんがカウンターで言った。
「大将、いつもの」
出てきたのは一番搾り。
「ああ、ビールのキリンか」と思ったら、大将が笑いながら首を振った。
「違う違う。この人、奥さんが迎えに来るまで毎晩入口を見て、首を長くして待ってるからキリンさんなんだよ」
見ると、おじさんは照れながら店の扉を見ていた。
数分後、奥さんが現れた瞬間、低く渋い声で一言。
「待ってたよ」
店中がなぜかニヤけた。
あだ名の由来が、想像以上に可愛すぎた。