「夫に不倫され、全財産を持って夜逃げされました。子ども2人をどう育てたらいいですか?」
役所の受付でそう言うと、出てきたのは頼りなさそうな若い青年だった。
名前と住所を書かされ、私は待った。
でも下の子のお迎え時間が迫り、「もう今日はいいです」と席を立った。
正直、何も変わらないと思った。
失意のまま保育園へ行き、公園で子どもたちを少し遊ばせ、暗くなる頃に家へ戻った。
すると玄関前に、さっきの青年が立っていた。
隣には女性職員と、生活相談の担当者。
青年は息を切らしながら言った。
「お母さんを一人で帰していい案件じゃないと思いました」
その手には、緊急支援の書類と相談先の一覧。
私は玄関先で泣き崩れた。
頼りないと思った彼が、その日いちばん頼れる大人だった。