
その一言で、空気が止まった。
面接中、前職の話をしている流れだった。
残業が多くて体力的にきつかったこと、
それがきっかけで転職を考えたことを、普通に説明していた。
特に盛っているわけでもなく、
ただ事実をそのまま話していただけ。
でも途中で、面接官が笑った。
「たった1時間の残業でねをあげるようじゃ、やっていけないよw」
その瞬間、ちょっとだけ思考が止まった。
……いや、1時間じゃない。
なんでそうなった?って思った。
でも、ここで流したらダメだなってすぐ分かった。
このままにしたら、
「すぐ音を上げる人」って認識のまま進む。
それは違う。
だから、落ち着いてそのまま言った。
「いや、10時間です」
ゆっくり、はっきり。
一瞬、沈黙が入った。
面接官の表情が止まる。
さっきまでの軽い空気が、一気に消えた。
「……10時間?」
明らかにトーンが変わっていた。
私はそのまま続けた。
「ほぼ毎日です。最初は大丈夫だと思っていましたけど、徐々に体力的にも厳しくなりました」
別に感情を乗せたわけじゃない。
ただ、事実をそのまま伝えただけ。
でも、その一言で流れは完全に変わった。
さっきまで笑っていた人が、今度は黙って聞いている。
「それは……かなり大変ですね」
その言葉には、さっきの軽さはなかった。
むしろ、少し気まずそうにも見えた。
正直、その時思った。
ああ、この人、ちゃんと聞いてなかったんだなって。
そして同時にもう一つ思った。
ちゃんと訂正してよかったって。
あのまま流していたら、
間違ったまま評価されていたと思う。
面接って、ただ質問に答えるだけじゃなくて、
こういうズレをその場で修正する場でもあるんだなって感じた。
その後の面接は、かなり普通だった。
変に突っ込まれることもなく、
むしろ丁寧に話を聞かれるようになった。
最後に外に出たとき、少しだけ息を吐いた。
別に言い返したかったわけじゃない。
ただ、違うことは違うって言っただけ。
でもそれだけで、扱われ方が変わることもある。
面接って、結局そこなんだと思う。