「一日中ベッドにいるだけで、家の空気が暗くなるわ」
義母や義妹は、私の顔を見るたびにそう言った。
私は水沢優子、32歳。結婚して5年になる。もともとイラストレーターとして働き、絵本作家になる夢を追いながら在宅で仕事をしていた。夫とは仕事を通じて出会い、2年の交際を経て結婚。そのまま義実家で同居することになった。
しかし3年前、駅の階段から転落し、脊椎損傷による下半身麻痺となってしまう。生活は一変し、私は車椅子生活になった。古い義実家では車椅子で動くことも難しく、ほとんどをベッドの上で過ごす日々。それでも上半身は動くため、在宅のイラスト仕事だけは続けていた。
最初のうちは義両親も気遣ってくれていたが、次第に態度は冷たくなった。
「役に立たない嫁」
「寄生虫みたいなもの」
そんな言葉を平然と投げつけられるようになった。
夫に相談しても、「本当のことだろ」と取り合ってくれない。そしてついに夫は言った。
「お前より若くて健康な嫁をもらった方がいいと思う」
その言葉を聞いた瞬間、私はすべてを悟った。
この家に、私の居場所はない。
私は離婚届を差し出し、家を出た。
一人暮らしになると、ヘルパーの生活支援も受けられるようになり、環境はむしろ快適になった。仕事にも集中でき、収入は月150万円近くにまで増えていった。
その頃になって、義母から何度も電話がかかってきた。
夫の会社は倒産、義妹は浮気と借金で離婚。
家まで売ることになり、生活は破綻していたという。
「戻ってきてほしいの。あなたの収入があれば…」
そう言われても、私にはもう関係のない話だった。
私は静かに答えた。
「私はもう赤の他人です」
そして弁護士を通じ、これまで受けた暴言による慰謝料を請求した。
今、私は夢だった絵本の挿絵の仕事を手がけている。
あの家を出た日から、私の人生はようやく前に進み始めたのだ。