夜、すき家でご飯を食べ終えてレジに並んだ。
前には一人の女性。
金髪ボサボサで、ラフな格好。
正直、少し目立っていた。
店員が言った。
「1180円です」
すると女性がすぐに返した。
「は?違うでしょ」
その時点で、嫌な予感がした。
「180円でしょ?」
店員は一瞬止まったが、落ち着いて答えた。
「特上うな丼は1180円でございます」
でも女性は引かない。
「外に180って書いてあったし」
そう言って財布を開いた。
「ほら、250円しかない」
完全に“払う気がない”流れだった。
俺はちらっと外を見た。
確かに、のぼりには「特上うな丼1180円」と書いてある。
でも縦書きで、一瞬だけ180に見えなくもない。
……いや、それでも普通は分かる。
180円で特上うな丼はない。
店員も困っていた。
「申し訳ありませんが……」
女性は腕を組んで言う。
「紛らわしい書き方する店が悪いでしょ」
完全にゴネモード。
正直、並んでるこっちも面倒だった。
早く終わってほしい。
そう思って「あのー」と声をかけようとした時だった。
女性が振り返った。
その瞬間、なぜか一瞬固まった。
顔が妙に印象的だった。
そして女性は、急に距離を詰めてきた。
「ねえ……払ってくれない?」
上目づかい。
完全に他人を巻き込むスタイル。
でも、無理だった。
普通に無視した。
すると女性はすぐにターゲットを変えた。
後ろにいた中年男性に同じことを言う。
「ねえ……らめぇ〜?」
男は困った顔で固まる。
その時だった。
店内から声が飛んだ。
「姉ちゃん、調子乗ってんじゃねえよ」
振り向くと、作業着の兄ちゃん。
その一言で空気が変わった。
女性は一瞬黙った。
さっきまでの強気が消えた。
そのまま店員に連れられて奥へ。
俺たちは何事もなかったかのように会計を済ませた。
店を出ながら、ふと思った。
あれ、本気だったのか。
それとも最初からゴネるつもりだったのか。
ただ一つだけ言えるのは、
特上うな丼が180円だったら、
俺も毎日来てる。