
新幹線のグリーン車で、前の外国人が大声で電話しながらフルリクライニング、しかも靴を前の席に乗せていた。
私は思わず声をかけた。
「すみません、ここ新幹線なので電話は控えてもらえますか?」
男は肩をすくめ、「Just a minute」とだけ言い、通話を続ける。
足もリクライニングもそのまま。周囲は静かに見守るだけ。
すると――前の席の会社員風の男性がゆっくり振り向き、低い声で一言。
「靴、座席に乗せるのはやめてもらえますか?」
男は面倒そうに「Why?」と答え、電話を切らないまま固まる。
その瞬間、前の男性はリクライニングを一気に倒す。
ガタン、と押し返され、外国人は驚いて足を引っ込めた。
「あなたがルールを守れば、私は戻します」
静かな口調だったが、車内の空気は一瞬で変わった。
男は舌打ちしながら電話を切り、靴を床に下ろす。
後ろも静かになり、前の男性は椅子を元に戻した。
グリーン車は再び落ち着きを取り戻した。
誰かが静かに秩序を守ることで、空間は保たれているのだと、改めて思った瞬間だった。