その痛みは、いきなり来た。
朝6時。
まだ外も暗い時間。
いつも通り台所で朝の準備をしていた。
冷蔵庫から卵を取ろうとした、その瞬間——
腰に激痛が走った。
「……っ!」
声も出ない。
そのまま足が崩れて、床に倒れた。
動けない。
息も浅くなる。
何が起きたのか分からないまま、ただ痛みだけが強くなる。
夫が駆け寄ってきた。
「どうした!?」
「動けない……痛い……」
それだけ伝えるのがやっとだった。
すぐに救急車を呼んでくれた。
数分後、搬送。
その時点ではまだ、ただのケガだと思ってた。
でも——
救急車に乗った瞬間から、何かがおかしかった。
隊員が私の体を確認した瞬間、
明らかに顔が変わった。
「……」
何も言わないけど、空気が違う。
そして小さく呟いた。
「……これ、病院じゃないな」
その一言で、心臓が跳ねた。
どういう意味?
その直後、無線で言った。
「警察直行で」
……は?
頭が追いつかない。
夫も焦って聞いた。
「え?病院じゃないんですか?」
隊員は少し迷ったあと、言った。
「すみません、これは事故ではない可能性が高いです」
事故じゃない?
じゃあ何?
その時、自分の体を見て気づいた。
服の一部に、見覚えのない汚れ。
そして——
皮膚に、明らかに不自然な痕。
転んだだけじゃつかない形。
その瞬間、背筋が冷えた。
記憶が、曖昧だった。
今朝のことが、途中から思い出せない。
「……え?」
夫の顔も青ざめていた。
「どういうことだよ……」
誰も答えない。
ただ、救急車は進む。
病院じゃなく、警察へ。
その時やっと理解した。
これは——
ただの体調不良じゃない。
「何かが起きてる」
でも、それが何なのか分からない。
それが一番怖かった。
そして数分後。
救急車は警察に到着した。
私はそのまま担架で運ばれた。
部屋に入った瞬間、
複数の視線が一斉に向いた。
その中で、一人の警察官が言った。
「詳しく確認させてください」
その言葉で、確信した。
これはもう、“事件”になっている。