正直、最初はただの違和感だった。
「最近の女ってさ」
「フォロワーが言ってたけどさ」
夫の言葉が、だんだん変わっていった。
誰かの受け売りみたいな言い方が増えて、
なんか嫌な感じがしてた。
でも、決定的だったのは娘だった。
「お母さん、これ見て」
そう言って見せられたのが、夫のSNS。
そこに書いてあったのは——
【専業主婦は寄生虫】
……は?
一瞬、意味が分からなかった。
目の前に、25年家のこと全部回してきた人間いるけど?
食事も、洗濯も、子どもも、生活も。
全部やってきたのに、それ?
そのまま夫に聞いた。
「これ何?」
そしたら普通に笑って言った。
「一般論だよ。刺さるなら図星だろ」
その瞬間、スッと冷めた。
ああ、この人、本気なんだって。
そこからは早かった。
夫はどんどん過激になって、
フォロワー増えるたびに調子に乗る。
顔出し配信まで始めた。
「男は搾取されてる!」って。
近所の人にも言われた。
「旦那さん、YouTube出てたよ」
正直、外歩けなかった。
恥ずかしくて。
でも夫は気にしない。
「むしろ広めたい」
その時点で、もう無理だった。
数日後、夫が帰ってこなくなった。
そしてLINEが来た。
「俺はもうその家にいる意味ない。離婚しとけw」
……“w”?
引き出し開けたら、離婚届が入ってた。
もう、迷いはなかった。
翌日、そのまま出した。
25年終わり。
でも、本当の話はここからだった。
離婚後、夫はSNSでイキり続けた。
【自由になった】
【これが男の人生】
でもすぐに崩れた。
夫、何もできなかった。
銀行も、カードも、全部私管理。
つまり——
自分の給料すら自分で使えない状態。
投稿が変わった。
【手続きが分からない】
【カード使えない】
【誰か助けて】
娘が一言。
「終わってる」
それから3ヶ月後。
インターホンが鳴った。
映ってたのは、ボロボロの夫。
「やり直したい」
即答だった。
「無理」
娘も言った。
「“真の男”って、手続きもできない人のこと?」
夫、完全に黙った。
最後に私は言った。
「あなたが望んだ離婚でしょ」
ドアを閉めた瞬間、全部終わった。
そして一つだけ思った。
“寄生虫”って言ってたの、誰だったっけ?