新築祝いの招待状を見たとき、少し迷った。
相手は同級生の神谷。
大企業、タワマン、エリート。
俺とは違う世界の人間
それでも礼儀として行った。
服も整えた。
靴も磨いた。
“泥”は持ち込まないように
でも――
玄関で言われた。
「土方は入るなw」
周りは笑った。
でも俺は、笑わなかった。
その瞬間、理解した。
こいつは“家の価値”を知らない
だから俺は一言だけ。
「じゃ帰る」
振り返らなかった。
怒りもなかった。
ただ、見切っただけ
――30分後。
スマホが鳴り続けた。
神谷。
出た瞬間。
『助けてくれ!!』
さっきと別人だった。
『水が止まらない!床が!壁が!』
完全にパニック。
俺は冷静に聞いた。
「元栓閉めたか?」
『わからない!どうすればいい!?』
典型だ
見た目だけの新築。
中身が雑。
俺は玄関で見ていた。
タイルの浮き
目地のズレ
あの時点で分かってた。
“持たない家”だと
神谷は叫ぶ。
『来てくれ!頼む!』
俺は答えた。
「行かない」
沈黙。
『なんでだよ!』
「入るなって言ったよな」
空気が凍る。
向こうで誰かが泣いてる。
でも俺は続けた。
「今やること教える」
「元栓閉めろ」
「電気確認」
「写真全部撮れ」
『お前来いよ!!』
「それは仕事だ」
「無料じゃない」
神谷、完全に崩れる。
『……金払うから』
ここで、勝負が決まった。
俺は一言だけ言った。
「最初からそう言え」
――1時間後。
俺は現場に行った。
さっき“入るな”と言われた家に。
今は全員、俺を見てる。
「助ける側」として
床は水浸し。
壁は滲み。
完全に施工ミス
俺は淡々と確認した。
「これ、保証対象」
「施工会社アウト」
神谷が震える声で聞く。
『助かるのか?』
「証拠残せばな」
そして最後に一言。
「家は、見た目じゃない」
「中身だ」
神谷は何も言えなかった。
――後日。
施工会社は全面やり直し。
神谷は、謝りに来た。
頭を下げて。
あの玄関で
俺は言った。
「もういい」
「仕事としてはやる」
「でも友達じゃない」
神谷の顔が止まった。
それで終わり。
――あの日。
俺は追い出された。
でも結果は違う。
“家に入れない人間”から
“家を救う人間”になった
土方は泥だらけだ。
でもその泥がなきゃ、
家は立たない