妹のナナは、昔から人のものを欲しがる子だった。
小物から始まり、やがて“人”に変わった。
高校の頃、私の彼氏を平然と奪った時から、それは変わっていない。
だから距離を置いた。
二度と関わらないために。
それから私は医師になり、結婚し、娘を産んだ。
静かで穏やかな生活を築いてきた。
だが、七五三の日。
神社の参道で、その平穏は壊された。
「……お姉ちゃん?」
振り返ると、派手な服と濃い化粧の妹。
そして視線はすぐ娘へ。
「その子、まー君のお金で育ったんでしょ?」
一瞬、意味が分からなかった。
そして続けて吐き捨てた。
「私の旦那のお金で育った汚い子供だわw」
その言葉で、完全に線を越えた。
私は静かに言った。
「ナナ、勘違いしてるよ」
「は?勘違い?」
隣にいた男に妹が振り向く。
「ね、まー君。この子、あなたの子でしょ?」
だが男は戸惑った。
「……え?初対面だけど」
その瞬間、すべてが崩れた。
妹の顔が固まる。
私ははっきり告げた。
「あなたが結婚した“松島正”は、私の夫じゃない」
「私はその人に会ったことすらない」
妹は言葉を失った。
7年間信じていた前提が、一瞬で崩壊した。
そこへ、夫が歩いてきた。
「待たせたね」
穏やかな声。
その姿を見て、妹は完全に現実を理解した。
「……この人が、お姉ちゃんの旦那?」
「そうよ」
その瞬間、隣の男が怒鳴った。
「お前……俺のこと、嫌がらせに使ったのか?」
妹は慌てて言い訳を始める。
だが周囲の視線が一斉に刺さる。
浪費、嘘、見栄。
すべてがその場で暴かれていった。
「離婚だ。今すぐ出ていけ」
その一言で、完全に終わった。
妹は泣きながら私に縋った。
「お姉ちゃん、どうしてくれんのよ!」
私は静かに答えた。
「自分で選んだんでしょ」
それだけだった。
娘が私の袖を握りながら言った。
「ママはね、パパと仲良しだよ」
その言葉で、すべてが決着した気がした。
妹は逃げるように去っていった。
その後のことは、どうでもいい。
ただ一つ、はっきりしている。
妹が追いかけていたのは、
最初から“私の幸せ”ですらなかった。
奪ったつもりでいたのは、最初から何も持っていなかっただけだった。