「若いくせに優先席に座るな!立てよ、みっともない!」電車内で怒鳴るおっさんに、私は一言も返さず義足を外した。次の瞬間、車内の空気が一変し…
2026/06/21

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電車の優先席に座っていたときのことだった。

その日は朝から足の調子が悪く、義足の接合部に痛みが出ていた。見た目だけでは分かりにくいが、長時間立っているのはかなり厳しい状態だったため、私は空いていた優先席に腰を下ろした。

すると、次の駅で乗ってきた中年男性が、私の前で突然立ち止まった。

「おい、若いのに何座ってんだ。立てよ!」

車内に響くほどの大声だった。

私は一瞬、何を言われたのか分からず顔を上げた。男性はさらに顔を赤くして続けた。

「みっともない!優先席の意味も分からないのか!」

周囲の乗客の視線が一斉に集まった。説明しようかとも思ったが、その怒鳴り方に胸の奥が冷たくなった。

私は何も言わず、静かに靴を脱いだ。

そして、ズボンの裾を少し上げ、義足を固定している部分を外した。

車内の空気が一瞬で凍りついた。

さっきまで怒鳴っていた男性は、目を見開いたまま固まり、口をぱくぱくさせるだけだった。隣に座っていた女性が小さく「大丈夫ですか」と声をかけてくれ、近くの高校生が「見た目だけで決めつけるの、よくないですよ」と男性に言った。

男性は顔を真っ赤にしたまま、次の駅で逃げるように降りていった。

私は義足を戻しながら、静かにため息をついた。

優先席に必要なのは、怒鳴る正義感ではない。相手の事情を想像する、ほんの少しの思いやりなのだと思った。

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