うちの出版社に入った国立大卒の新人くん。地元の国立大出身だから珍しくもないはずなのに、なぜかエリート気取り。事務作業も掃除も雑用もまともにできず、先輩の仕事に口を出すばかり。「今時FAXなんて使うんですかー?」と笑いながら言う始末。
営業を任せてもいないのに「自分ならこうするのに」と上から目線。耐えかねた先輩が課長に相談すると、課長は策を講じた。翌日の朝礼で課長は告げる。「今日から君には新刊の営業を任せる。アポイントなしで書店を回り、30店舗に置いてきてもらう。足りなければ事務所に電話して他の営業に届けさせるように。」もちろん、そんな恒例行事はなく、渡されるのは難解な返品本ばかり。
新人くんは大張り切りで出かけたが、退社時間まで帰ってこず、携帯も無視。周囲の先輩たちは半信半疑で、状況を見守るしかない。誰もできない無理難題を押し付けられ、少しは身の程を知るだろうと、心の中で期待する自分もいた。
翌日、新人くんは雨を言い訳に弁解するが、課長や先輩の目は厳しい。
その日一日で、自己中心的な態度がどれほど周囲に影響を与えるか、そして努力せずに理想だけを語っても現実は何も変わらないことを、痛感せざるを得なかった。
この試練は、ただの新人いびりかもしれない。しかし、現実の厳しさを身をもって知ることで、彼の態度が少しでも変わるなら、これは新人教育として必要な「薬」だったのかもしれない――そう考えながら、先輩たちは静かに見守るのだった。