「毎晩うるさいです」玄関に貼られた一枚の紙。私は隣人を疑ったが、本当の犯人は自分だった。
2026/06/08

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私は仕事が終わると、コンビニで夕食を買い、自宅へ帰るだけの生活を送っていた。

誰かを部屋へ招くこともなく、静かな毎日だった。

だから玄関の貼り紙を見た時も、

「人違いじゃないの?」

そう思っていた。

ところが部屋へ入った瞬間、あることが頭をよぎった。

最近、私はアプリで知り合った人と毎晩通話していたのだ。

最初は数分だけだった。

「今日もお疲れさま」

「明日も仕事?」

そんな何気ない会話だった。

でも気が合った。

気付けば毎日通話するようになり、最後はそのまま寝落ちするのが日課になっていた。

スマホを枕元に置き、通話をつないだまま眠る。

朝起きると通話時間が五時間を超えていることも珍しくなかった。

それでも私は気にしていなかった。

小声だし、一人だし、壁の向こうまで聞こえるはずがない。

そう思い込んでいたからだ。

その夜、私は通話相手に貼り紙のことを話した。

すると相手は少し沈黙したあと、苦笑しながら言った。

「正直に言うと、たまに声大きいよ。

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私は耳を疑った。

さらに聞くと、眠くなった私は急に笑い出したり、同じ話を何度も繰り返したりしていたらしい。

しかも寝落ち寸前になると、自分では気付かないほど声が大きくなっていたという。

私は信じられなかった。

そこで確認することにした。

録音をオンにし、いつもの音量で話してから部屋を出た。

そして玄関の前で耳を澄ませた。

すると――

聞こえた。

普通に聞こえた。

内容まではわからない。

でも誰かがずっと話していることははっきりわかる。

笑い声はさらに響いていた。

私はその場で頭を抱えた。

犯人は私だった。

友達を呼んでいないから大丈夫。

そう思い込んでいただけだった。

実際には毎晩、スマホ越しに長時間通話を続け、隣人へ強制的に聞かせていたのである。

翌朝、私はすぐに謝罪のメモを書いた。

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。今後は深夜の通話を控え、イヤホンを使用いたします。」

そしてその日から寝落ち通話をやめた。

通話は短時間。

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イヤホン使用。

眠くなったら終了。

当たり前のことを、ようやく実践したのだ。

数日後、玄関の貼り紙はなくなっていた。

廊下は静かだった。

私は少し安心した。

そして思った。

まさか一人暮らしの私が、「毎晩の話し声」で苦情を受けるとは。

誰も部屋へ呼んでいなかった。

でも私の声だけは、毎晩隣の部屋へお邪魔していたらしい。

恋の始まりはアプリだった。

けれど現実の壁は、私が思っていたよりずっと薄かったのである。

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