「人の車でスピード違反しておいて、黙ってればバレないと思ったの?」
そう言いたくなった。
ある日突然、私宛に届いたのは奈良県警からの出頭通知。
オービスによる速度違反。
一般道で30km以上オーバーの可能性。
罰金十万円近く、違反点数、免停…。
通知を見た妻はすぐに私を疑った。
「だから最近、運転が荒いって言ったじゃない。」
私も最初は焦った。
「もしかして自分だったか…?」
そう思ったくらいだ。
でも、どうしても引っかかる。
その時間、その場所を走った記憶がなかった。
ふと思い出した。
「あの日、親戚に車を貸したんじゃ…。」
私はすぐにドライブレコーダーを確認した。
映像を再生すると、運転席にいたのは私ではない。
親戚だった。
しかも音声まではっきり残っていた。
「この道、空いてるな。」
「ちょっと飛ばしても平気だろ。」
アクセルを踏み込む音まで録音されていた。
さらにスマホの位置情報を確認すると、その時間の私は近所のスーパー。
レシートの時間も一致していた。
証拠は全部そろった。
私は親戚へ電話した。
「この日、この時間、車を運転したよね?」
すると返ってきたのは、
「えー?覚えてないな。」
だった。
思わず耳を疑った。
人の車で違反して、
警察から通知が持ち主に届いているのに、
「覚えてない。」
それで終わらせるつもりなのか。
私は静かに言った。
「じゃあ警察でドラレコ見てもらおう。」
その瞬間、電話の向こうが黙った。
数日後、私は証拠を全部持って警察署へ向かった。
警察官に事情を説明すると、オービスの写真を見せてくれた。
写っていたのは間違いなく私の車。
でも運転している顔は私じゃない。
警察官も写真を見ながら言った。
「ご本人ではありませんね。」
私はドラレコ映像、位置情報、レシート、親戚とのメッセージを全部提出した。
警察から親戚へ連絡が入る。
最初はまだ、
「記憶が曖昧で…。」
と言い訳していたらしい。
しかしドラレコの音声を聞かされた瞬間、
「……すみません。自分です。」
と認めたそうだ。
最初から素直に謝れば済んだ話なのに、
逃げようとしたせいで、全部自分に返ってきた。
私は何の処分も受けずに済み、
違反の責任は実際に運転していた親戚が負うことになった。
家へ帰ると、妻が気まずそうに言った。
「ごめん…。完全にあなたを疑ってた。」
私は苦笑いしながら答えた。
「通知が来たら疑いたくなる気持ちは分かる。でも、証拠も見ないで犯人扱いするのはやめてほしい。」
その夜、親戚からも連絡が来た。
「本当に迷惑をかけた。全部自分で対応する。」
私は一言だけ返した。
「それが当たり前。」
今回、痛感した。
怖い通知が届くと、人は焦って全部認めたくなる。
でも、一番大切なのは慌てることじゃない。
事実を確認して、証拠を集めること。
そしてもう一つ。
人の車を借りて違反したなら、自分の責任くらい自分で取れ。
「覚えてない」で逃げられるほど、ドライブレコーダーは甘くなかった。