
本社から新社長が視察に来た日のこと。
工場でいつも通り仕事していると、部長に呼ばれて紹介された。
「こちらが相馬です。現場の要でして」
新社長は人事資料を見て、眉をしかめた。
「……中卒?」
そして平然と言った。
「なぜ中卒を採用した?上場企業に無能は恥だろ」
通路の空気が一瞬で凍った。
部長は笑ってごまかそうとしたが、私は黙って言った。
「社長、学歴で判断するなら私は不要ですね。」
「では退職します。」
新社長は鼻で笑った。
「好きにしろ。代わりはいくらでもいる。」
その日、私は本当に退職届を出した。
――翌朝。
ニュースを見ていた私は思わず苦笑した。
画面にはこう映っていた。
「物流最適化システムの開発責任者、相馬恒一氏。
上場企業の成長を支えた技術者として表彰」
会社の上場を支えたシステムの設計者。
それが、昨日“中卒の恥”と言われた俺だった。
同じニュースを見た新社長は、
会議室で顔面蒼白になったらしい。
「あいつが…会社の中核だったのか?」
しかし、もう遅い。
非通知の電話が何度も鳴ったが、
私は一度も出なかった。
学歴で人を切った瞬間、
切られたのは――会社の未来だった。