
私の右足は膝から下が義足だ。
でも見た目ではほとんど分からない。
だから電車の優先席に座っていると、
時々「若いのに座ってる」と思われることがある。
その日も、朝の満員電車だった。
疲れていたので優先席に座っていた。
すると突然、目の前のおっさんが怒鳴った。
「おい!立てよ!」
「若いくせにみっともない!」
車内の視線が一斉にこちらに集まる。
正直、カチンときた。
でも私は何も言わなかった。
ただ――
黙って右足の義足を外した。
そして、そのままおっさんの前に差し出した。
車内の空気が一瞬で凍った。
さっきまで怒鳴っていたおっさんは、
顔を真っ赤にして固まった。
周りの乗客も言葉を失っている。
おっさんは何も言えないまま、
視線をそらして別の車両へ逃げていった。
私は義足を戻し、静かに座り直した。
見た目だけでは分からない事情を
人はたくさん抱えている。
だからこそ――
他人を決めつけて怒鳴る前に、
ほんの少し想像してほしいと思う。