
日曜日の午後、家族でドライブしていた時のこと。
信号待ちで――親父が前の車にコツンと追突した。
しかも相手は、真っ赤なフェラーリ。
家族全員、車内で凍りついた。
親父はすぐ車を降りて謝った。
「すみません、保険使いますので連絡先教えてください。」
フェラーリの運転手は40代くらいの落ち着いた男性。
車をぐるっと一周して傷を確認していた。
正直、修理代はとんでもない額になると思った。
ところがその人は、ふっと笑って言った。
「この程度の傷なら、サーキット走れば付くレベルですよ。」
「気にしなくて大丈夫です。」
親父も俺たちも、一瞬言葉が出なかった。
それでも親父は心配で言った。
「いや、もし後で何かあれば必ず連絡ください。」
連絡先を渡して、その日は別れた。
でも――数日経っても連絡は来ない。
親父は逆に不安になって、こちらから電話した。
「本当に大丈夫ですか?」
すると運転手は笑って言った。
「本当に大丈夫ですよ。気にしないでください。」
結局、その後も修理の請求は一切なかった。
フェラーリに追突した時は
人生終わったと思ったけど――
あの時の運転手が、
ただただ寛大な人だった。
今でも親父は時々言う。
「フェラーリより、あの人の器の方が高級やったな。」