フードコートの片隅で、私はいつものように牛丼を注文した。
しかし、ひと口食べた瞬間、違和感が走った。
「……ご飯が冷たい」
それは“少しぬるい”というレベルではなかった。明らかに保温されていない、時間が経ったような冷たさだった。
周囲には同じように食事をする客がいる。だが、私の中ではその一杯だけが異常に感じられた。
我慢して食べることもできた。だが、その日はどうしても納得できなかった。
私はカウンターへ戻り、店員に静かに告げた。
「本部に苦情を入れます」
店員は一瞬驚いたような表情を見せたが、特に反論はなかった。
私はその場でスマートフォンを取り出し、公式のお問い合わせフォームから状況を詳細に入力した。
・提供時の状態
・ご飯の温度
・体験した違和感
淡々と事実だけを書き、送信ボタンを押した。
その後、私は何事もなかったようにその場を離れた。
数日後。
本部からの返信が届いた。
そこには謝罪の言葉とともに、店舗への確認結果、そして提供オペレーションの見直しが記されていた。
さらに、該当店舗には指導が入ったことも明記されていた。
あのとき感じた小さな違和感は、確かに“問題として扱われた”のだと知った瞬間だった。
私は静かにスマートフォンを閉じた。
そして思った。
声を上げなければ、何も変わらないのだと。