その日、私は軽い頭痛を理由に学校を休んだ。特に大きな理由があったわけではなく、いわゆる仮病に近いものだった。
しかし、午後になって状況は一変する。
「念のため診察を受けてください」
家族に促され、私は近くの病院へ向かった。軽い気持ちでの受診だったが、医師は問診の段階で表情をわずかに曇らせていた。
そして検査が進むにつれ、その空気は明らかに変わっていく。
静かだった診察室で、医師はモニターを何度も確認し、言葉を選ぶように沈黙したまま手を止めた。
やがて、友人でもある医師が私に向かって低い声で言った。
「……これは、単なる頭痛ではありません」
その瞬間、室内の空気が凍りついた。
私は思わず笑って誤魔化そうとしたが、医師の顔は冗談を許さないほど真剣だった。
「すぐに詳しい検査を追加します。場合によっては緊急対応が必要です」
その言葉を聞いた瞬間、背中に冷たいものが走った。
“ただの仮病のつもりだった”という意識が、一気に崩れていく。
医師は再びモニターに視線を戻し、小さく息を吐いた。
そして、誰にも聞こえないほどの声で呟いた。
「……見逃していたら危なかったかもしれない」
その一言で、私はようやく理解した。
自分の“軽い頭痛”は、思っていたものとはまったく違う可能性があるのだと。
そして医師の表情が、さらに険しくなっていった。