「ここは私有地です。無断で駐車しないでください」
そう書いた張り紙をフロントガラスに貼ったのは、もう三度目だった。
我が家の敷地の端には、車一台分ほどの空きスペースがある。普段は来客用に空けている場所だが、近くの大学に通う学生たちが、いつの間にか勝手に停めるようになっていた。
最初は一度だけのことだと思った。
だが、翌週も、さらにその次の日も、見知らぬ軽自動車が当然のように置かれていた。
私は穏便に済ませたかったので、まずは張り紙をした。
「ここは私有地です。無断駐車はおやめください」
しかし効果はなかった。
むしろ、張り紙は丸めて地面に捨てられていた。
その瞬間、私の中で何かが切れた。
注意しても無視するなら、こちらも正式に対応するだけだ。
私は車の写真を撮り、ナンバーも控えた。そして管理会社と警察へ相談し、敷地内に「無断駐車は記録し、関係機関へ報告します」と掲示した。
それでも翌朝、また同じ車が停まっていた。
私はすぐに、業者に依頼して敷地の入口に移動式ポールとチェーンを設置した。もちろん、車を傷つけるようなことはしない。ただ、勝手に出入りできないようにしただけだ。
夕方、外から慌てた声が聞こえた。
「え、出られないんだけど!」
見ると、例の学生らしき男がスマホ片手に真っ青になっていた。友人らしき数人も一緒で、完全に焦っている。
私は玄関から出て、静かに言った。
「ここ、私有地です。張り紙、何度も見ましたよね?」
学生は目を泳がせながら、「ちょっと停めただけで……」と言った。
私は撮りためた写真を見せた。
「ちょっと、ではありません。何度もです。張り紙を捨てたことも確認しています」
その場で彼は黙り込んだ。
結局、本人の謝罪、今後二度と停めないという念書、そして清掃費と迷惑料を支払うことで話は終わった。
それ以来、我が家の前に無断駐車は一台もない。
人の敷地を無料駐車場だと思っている人には、優しい張り紙より、逃げ道のない記録と正式対応の方がよほど効く。