父の葬儀が終わろうとしていた時、弟の妻ミミカから突然電話がかかってきた。彼女は笑いながらこう言った。
「お義父さんには本当に感謝してるんです。おかげで新婚旅行がすごく豪華になりました」
意味が分からず聞き返すと、ミミカは父の通帳と印鑑を貴重品入れから持ち出し、銀行から金を引き出したと平然と告白した。高級ホテルやレンタカーで北海道を旅行し、すでに三百万円ほど使ったという。
怒りと呆れで言葉を失った私だったが、あることを思い出し思わず笑ってしまった。
「通帳の名義、ちゃんと確認した?」
父は生前整理をしており、葬儀費用などの準備のため預金はほとんど残っていなかった。つまり、ミミカが引き出した三百万円は父の金ではなく、同じ姓の弟・廉太郎の預金だったのだ。
数日後、弟から慌てた電話がかかってきた。
「俺の預金がなくなってる!」
私は静かに言った。
「旅行の前に引き出されたなら、奥さんに聞けば?」
その瞬間、電話の向こうで夫婦喧嘩が始まった。
弟は昔から父の金に頼り、結婚後も妻と共に実家に居候し生活費も入れなかった。父が癌で余命を宣告された時でさえ「治療は金の無駄」と言い放つような男だった。
父の死後、私は実家を売却し、弟夫婦には最低限の分だけ渡して縁を切った。噂では、その後二人はかなり苦労しているという。
今の私は結婚し、二人の子供と穏やかな家庭を築いている。
父が残してくれたのは財産ではなく、人としてどう生きるべきかという教えだった。
今日も仏壇に手を合わせながら、心の中でつぶやく。
「お父さん、ありがとう」