夫が土下座しながら切迫した声で言った。
「お願いだ…20歳年下の彼女が妊娠した。だから離婚してくれ」
私は静かに答えた。
「はい。離婚届け。長男以外は連れていくね」
すると夫は驚きの表情で叫んだ。
「は?長男も連れていけよ!」
私は迷わず首を横に振った。
「それは無理、だってこの子は…」
長男は私と夫の間に生まれた大切な存在。
これまで一緒に笑い、泣き、成長を見守ってきた。
この子だけは、どんなことがあっても手放せない。
夫はしばらく言葉を失った。
「そんな…どうしてだ…」
私は冷静に説明した。
「愛情だけじゃなく、生活も未来も守りたい。あなたが新しい家庭を作るのは構わない。でも、この子の人生を巻き込むことはできない」
夫の目にはわずかな悔しさと戸惑いが浮かんでいた。
しかし、私の決意は揺るがない。
「離婚は承諾する。でも長男は私と一緒。あなたには、他の子だけを連れて行ってもらう」
土下座していた夫は、ようやく理解したように深く息をついた。
その瞬間、私の胸には悲しみと決意が混ざり合った。
失うものもある。でも守るべきものがある――それだけは絶対に譲れない。