
「荷物を取りに数分降りただけなのに――戻ったら、私の車の窓がぶち抜かれていた。」
助手席のガラスは粉々。
地面にもシートの上にも破片が散っていて、見た瞬間にわかった。
これは事故じゃない。
完全に“わざと”だ。
思い当たる相手はいた。
最近、夜になると近所で騒いでいた若い連中。
バイクの空ぶかし、大声、笑い声。
ある日、我慢できずに一度だけ言った。
「少し静かにしてくれませんか。」
そのときの舌打ちと睨みつける目を、私は覚えていた。
近所の人は言った。
「保険で直せばいいよ。」
「関わらない方がいい。」
でも私は、そのまま終わらせなかった。
まず車の写真を撮る。
ドラレコを確認する。
管理会社に連絡して防犯カメラを見せてもらう。
さらに近所も一軒ずつ回った。
すると――
あいつらが一番見られたくなかった映像が出てきた。
帽子をかぶっていても、歩き方でわかる。
あのとき睨んできた少年だった。
私は全部まとめて警察に提出した。
そして数日後、管理会社で相手と親が並んだ。
最初、親は言った。
「子どものいたずらで…」
私は黙って机に並べた。
防犯カメラの静止画。
ドラレコの記録。
修理見積書。
被害届の控え。
一枚ずつ出すたびに、相手の顔色が変わっていく。
夜中に騒いでいたあの連中は、
誰もまともに口を開けなかった。
結局、修理代も清掃費も全部相手負担。
さらに警察と管理会社から厳重注意。
修理された車を見ながら、私は思った。
ガラスは直る。
でも――
一度壊した信用は、
そう簡単には戻らない。