人事異動の発表があった朝、私は隣県の支店へ移動することになった。通える距離とはいえ、通勤時間は三十分も早くなる。「どうでもいい」と夫は言ったが、私にとってこれは単なる左遷ではなく、収入が三百万も減る現実だった。帰宅した夫は平然と言った。「収入が減った嫁に用はない。本社勤務の浮気相手と再婚する」――その瞬間、私は何も言わず同意した。いや、むしろ計画通りに進めてやる、と心に決めたのだ。
職場で浮気相手の存在を確かめる証拠も手に入れた。杉岡さんとの関係は社内で噂になっており、誰もが知っていた。ならば、もう迷いはない。慰謝料請求はしっかりと行う。そのうえで、離婚届にサインしてもらう。夫は頭を抱えながらも承諾した。
一か月後、慰謝料を受け取り、離婚は完了した。ところが驚くべきことに、異動先の支店は本社から出世コースへ戻る布石だったのだ。私は課長から部長クラスの待遇に昇格し、夫が誤解していた「左遷」は単なる勘違いだったことが判明する。
結局、夫との離婚劇は、私のキャリアを加速させる結果となった。元夫は主任から平社員に降格し、評価も失墜。私は新天地で、意気揚々と新しい日常を始めたのである。