妊娠中も出産も、夫はずっと優しい人でした。
陣痛で苦しんでいる時も手を握って励ましてくれたし、子どもが生まれた瞬間は私以上に泣いて喜んでいました。
だから私は、この人なら一生一緒にいられると思っていたんです。
ところが退院して数日後、夫は赤ちゃんの顔を見ながら言いました。
「なんか目が全然似てないよね。」
私は笑って答えました。
「赤ちゃんって顔が変わるし、一重だからっておかしくないよ。」
でも夫は真剣な顔のまま、
「念のためDNA鑑定しよう。」
と言ったのです。
「どうして?私を信じられないの?」
そう聞くと、
「信じてないわけじゃない。ただ確認したいだけ。」
と返されました。
その言葉を聞いた瞬間、私はすべてが冷めました。
信じている人は、「確認」なんてしません。
疑っているから確認するんです。
私は何度も説明しました。
「私はあなたを裏切るようなことは一度もしていない。」
それでも夫は、
「だったら鑑定して困ることないよね。
」
の一点張りでした。
結局、DNA鑑定は行われました。
結果はもちろん親子関係99.99%以上。
夫は安心したように笑って、
「ほら、これでスッキリしたね。」
と言いました。
私は静かに答えました。
「スッキリしたのは、あなただけだよ。」
夫は驚いた顔をしていました。
私は続けました。
「DNAはあなたが父親だって証明してくれた。でも、あなたは鑑定するまで私を妻だと信じられなかった。」
「あなたが疑ったのは子どもじゃない。私の人生そのもの。」
夫は必死に、
「そんなつもりじゃなかった。」
と謝りました。
でも、一度壊れた信頼は、鑑定書一枚では元には戻りません。
私は子どもを抱き上げ、実家へ帰る準備を始めました。
あの日、証明されたのは親子関係だけ。
失われたのは、夫婦として一番大切だった「信頼」でした。