バレンタイン当日、妻の祖母から小さな荷物が届いた。箱を開けると、中には丁寧に包まれたチョコレートが入っていた。手書きのメッセージも添えられており、温かい気持ちが伝わる贈り物だった。
しかし、その日はちょうど不在が続き、再配達の時間にも間に合わず、結局その日のうちに受け取ることができなかった。せっかくの気持ちが届いたのに、お礼が遅れてしまう――そう思うと、私は少し落ち込んでいた。
「明日きちんと連絡しよう」と考えながら、玄関先を確認したそのときだった。
インターホンが鳴り、外に出ると、そこには宅配便の制服を着たクロネコヤマトの配達員が立っていた。手には、あのチョコレートの箱。
「これ、気になってしまって……」
そう言いながら、配達員はわざわざもう一度足を運んでくれていたのだった。規定の再配達ではない、完全な“善意”の訪問だった。
事情を聞くと、偶然近くを通った際に、まだ未受け取りのまま残っていることに気づき、気になって戻ってきたという。
私は言葉を失った。ただの荷物ではなく、“大切な気持ち”として扱ってくれたことが伝わってきたからだ。
「ありがとうございます」と何度も頭を下げると、配達員は少し照れくさそうに笑い、次の配達へと向かっていった。
その背中を見送りながら、私は改めて思った。届けられるのは物だけではなく、人の思いやりそのものなのだと。