「オーダー通ってますか?」
店に入ってすぐ、私は確認のためにそう店員へ声をかけた。忙しそうな店内の中、店員は一瞬こちらを見て「はい」と短く答えた。その言葉に特に疑いは持たず、私は席に座って料理が来るのを待つことにした。
しかし、時間が経っても料理は一向に運ばれてこない。周囲の客は次々と食事を受け取り、席を立っていく。時計を見ると、すでに30分、40分が過ぎていた。
違和感が確信に変わったのは50分後だった。
「もう帰ります」
私は席を立ち、レジへ向かう。すると店員は淡々と告げた。
「5000円です」
一瞬、意味が理解できなかった。
「は?出てきてないのに?」
思わず声が上がる。しかし店員は表情を変えず、同じ調子で繰り返す。
「ありがとうございます」
その機械的な一言に、さらに混乱が増した。
料理は出ていない。注文が通っていたかどうかも曖昧なまま、なぜ料金だけが発生しているのか理解できなかった。
「は?」という言葉しか出ないまま、私はその場に立ち尽くす。
しかし店側は説明をする様子もなく、会計処理は淡々と進められていった。
納得できないまま店を出たその帰り道、私はようやく気づくことになる。あの「はい」という一言が意味していたものを。そして、その店の“仕組み”そのものに潜んでいた違和感の正体を。