夜明け前、玄関のチャイムが鳴った。扉を開けると、六歳の孫・リナがリュックを背負い、髪は乱れ、頬には涙の跡があった。
震える声で言う。「ばあば、遠足のお弁当がないの……」
私は胸を締めつけられながら尋ねた。「パパとママは?」
リナは俯いたままか細く答えた。「……弟と動物園」
その時、私は事の重大さに気づいた。遠足当日、息子・隼人と嫁・可奈子は下の子スバルだけ連れて外出し、リナを置き去りにしていたのだ。
リナは里子だった。五年前、児童養護施設から迎えた子で、両親を事故で亡くしていた。血のつながりはなくても、私にとってリナは大切な孫だった。
しかし三年前、実子スバルが生まれると、態度は一変した。「血のつながりがない子に執着しないで」と可奈子はリナの前で平然と言った。
私はすぐ台所に立ち、卵焼きと唐揚げを詰めた弁当を作った。「大丈夫。ばあばが用意する」リナは小さく頷いた。
着替えさせようとした瞬間、私は青あざと火傷の痕に息を呑んだ。
病院へ連れて行き診断書を取得した。話を聞くと、弟の世話を押し付けられ、失敗すれば怒鳴られ、叩かれ、火傷をしても放置されていた。
私は決めた。守るのは私しかいない、と。
可奈子に電話すると、眠そうな声で「忘れてたわ」と言い、隼人は「家族だけで楽しんでる。邪魔するな」と一方的に切った。
数日後の法事、旅行帰りの二人は自慢話を始めた。私はレコーダーを置き、可奈子の暴言と口座明細を提示した。「信用できないので、孫の口座はゼロにしました」
二人の顔色が変わる。診断書と傷の写真を出し、児童相談所にも連絡済みと告げた。
その後、私は孫二人を引き取り、リナは少しずつ笑顔を取り戻した。遠足の日、リナは言った。「ばあばのお弁当が一番好き」
私は誓った。二人の未来だけは、私が守り抜くと。