社員旅行の日、6年目の新入社員・井上は目立たぬ存在だった。静かで社交的でなく、周囲の先輩から「弱い者」としていじめられていた。会社の表向きは明るいが、内部では陰険な関係が渦巻いていた。
目的地の温泉旅館へ向かう観光バス内でも、井上は罵声や席を蹴られるなど耐え難い扱いを受け、精神的に追い詰められた。翌日、休憩で立ち寄ったサービスエリアで、運動部長に「自販機でコーヒーを買ってこい」と命じられる。だがその瞬間、あらかじめ計画されていたかのようにバスは発進し、井上は一人置き去りにされた。
寒さと絶望に震えながら、井上は職員に助けを求める。職員は悪質さを認め、警察に連絡するよう勧めた。すると、天井のモニターに速報が映し出される。「高速道路で観光バスが転落、炎上。乗客の生存は困難」との報道。井上は置き去りにされたバスの中の自分を確認し、恐怖と安堵が交錯する。
警察の捜査で映像が公開されると、社員たちのいじめ以上の暴力的行動が記録され、薄暗い人影に向かって怒鳴り、蹴る様子が映っていた。
その正体は不明で、一説には先輩の怨念や精神が影として残っていたのではとされる。
この事件の真相は未解明のまま、唯一の生存者である井上の証言だけが鍵となる。未だ彼の存在は公式記録上「死亡」とされ、年末の恐怖体験は心に深く残っている。