妻が亡くなってから、家のことは全部中学生の娘に任せていた。
息子の世話、洗濯、食事、掃除。
俺は仕事で疲れている。
家事は女の仕事だ。
そう思い込んでいた。
ある夜、夕飯ができていないことに腹を立て、娘を怒鳴った。
「なんで家事もできないんだ!」
娘はうつむいたまま言った。
「私、今日テストだったの。弟の面談も行ったの」
その言葉すら言い訳に聞こえて、俺は手を上げた。
次の瞬間、息子が泣きながらスマホを握っていた。
「もう録った。先生に送った」
翌日、学校と児相の職員が家に来た。
さらに会社にも連絡が入り、俺は“家庭を支える父親”ではなく“娘に妻の代わりをさせていた男”として見られた。
娘は最後に一言だけ言った。
「お母さんがいなくなったのは、私が家政婦になるためじゃない」
その言葉で、俺は初めて自分が父親ですらなかったと気づいた。