「店員が1万円を盗んだ!」そう思い込んだ私――本当に間違っていたのは誰だったのか
2026/05/30

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あの日、娘が学校で使う消しゴムが欲しいと言った。

財布を開くと細かいお金がなく、入っていたのは1万円札だけだった。

私は何の疑いもなくそのお札を娘に渡し、近所の雑貨屋へ行かせた。

ところが数十分後、帰宅した娘が差し出したお釣りを見て違和感を覚えた。

どう計算しても足りない。

消しゴムしか買っていないはずなのに、お金がほとんど残っていなかったのだ。

私は娘に何度も確認した。

しかし娘は不安そうな顔で、

「消しゴムしか買ってない」

と言うばかりだった。

すると私の頭の中には一つの答えしか浮かばなくなった。

店員が間違えた。

いや、もしかすると盗ったのではないか。

私は怒りに任せて店へ向かった。

店員に事情を説明すると、相手は冷静に言った。

「お嬢さんから受け取ったのは千円札です」

私は耳を疑った。

そんなはずがない。

私は確かに1万円札を渡した。

そう信じ込んでいた。

だから店員の言葉を嘘だと決めつけ、大勢の客が見ている前で激しく責め立ててしまった。

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その場は警備員まで現れ、大騒動になった。

結局、店員は納得していない様子のままお金を差し出したが、私は最後まで自分が正しいと思っていた。

しかし数週間後だった。

月初めに家計簿を整理していると、なぜか現金が1万円近く多いことに気づいた。

その瞬間、背筋が凍った。

何度数えても同じだった。

そこでようやく理解した。

私が娘に渡したと思い込んでいた1万円札は、最初から財布の中に残っていたのだ。

娘が持って行ったのは千円札だった。

つまり正しかったのは店員で、間違っていたのは私だった。

あの日の光景が頭をよぎる。

娘の不安そうな顔。

店員の悔しそうな表情。

そして自分の怒鳴り声。

思い出すたびに胸が苦しくなる。

人は一度「自分が正しい」と思い込むと、都合の悪い事実が見えなくなる。

だからこそ大切なのは、怒る前に確認することなのだろう。

あの日の失敗は今でも誰にも話していない。

でも、一生忘れられない教訓として心に残っている。

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