その日、
私は朝から本気だった。
狙っていたのは、
数量限定の“大人の図鑑シール”。
SNSでは前日から話題で、
「朝イチじゃないと無理」
「即終了する」
そんな投稿ばかり流れていた。
だから私は、
ちゃんと早起きした。
眠い目をこすりながら家を出て、
店に着いたのはかなり早い時間。
その結果、
整理券番号は3番。
内心、
ほぼ勝ちを確信していた。
だって3番だ。
しかも、
店側はハッキリ書いていた。
「番号順にご案内します」
だから私は安心していた。
これなら大丈夫。
ちゃんとルールを守れば、
ちゃんと買える。
そう思っていた。
でも、
現実は違った。
開店時間が近づくにつれ、
店の前はどんどん人で埋まっていく。
整理券を持ってない人まで、
入口付近に集まり始めていた。
少し嫌な予感はした。
でもまさか、
あんなことになるとは思わなかった。
10時35分。
ついに番号が呼ばれる。
私は整理券を握りしめ、
レジへ向かった。
その瞬間だった。
店員が申し訳なさそうな顔で言った。
「シール、終了しました」
私は固まった。
「……え?」
聞き間違いかと思った。
でも店員は続けた。
「番号順ではなく、
お客様が自由に取る形式になってしまって……」
頭が真っ白になった。
いやいや待って。
整理券は?
番号順って書いてあったよね?
私は朝から並んだ。
ルール守った。
なのに、
後から来た人が先に取って、
私は買えない?
意味が分からなかった。
怒りが一気に込み上げた。
私は深呼吸して、
その場で言った。
「整理券順じゃないなら、
整理券配る意味あります?」
周囲が静かになる。
近くにいた客が、
こちらを見る。
でももう止まれなかった。
「早く来た人が損して、
横入りみたいな人が得するなら、
ルール壊れてますよね?」
店員は焦り始めた。
「申し訳ありません……」
でも、
謝れば済む話じゃない。
私は続けた。
「整理券を信じて並んだ人、
他にもいますよね?」
後ろから、
「それは確かに……」
と小さな声が聞こえた。
空気が変わった。
さっきまで黙っていた人たちも、
ざわつき始める。
そのタイミングで、
店長が出てきた。
事情を説明され、
何度も頭を下げられた。
そして最終的に言われた。
「追加分を確保します」
「次回優先でご案内します」
私はそこでようやく、
少しだけ怒りが収まった。
別に、
クレームを入れたかったわけじゃない。
ただ、
ルールを守った人間が、
バカを見る空気が嫌だった。
整理券って、
公平にするためにあるんじゃないの?
それを、
現場のグダグダで意味なくするなら、
最初から配らない方がマシだ。
帰り道。
私は手に入ったシールを見ながら、
思わず笑ってしまった。
「やっぱり、
黙ってたら終わりなんだな」
理不尽って、
声を上げないと、
そのまま“なかったこと”にされる。
でも逆に、
ちゃんと言えば変わることもある。
あの日、
私が一番腹が立ったのは、
シールが買えなかったことじゃない。
“ルールを守った人間が損する空気”だった。
だから私は、
次も絶対言うと思う。
「整理券順じゃないなら、
最初からそう書いとけ」