「園児募集のお知らせ?」
ポストに入っていたチラシを何気なく広げた瞬間、私は固まった。
そこには近所の幼稚園数件の名前と、園児募集の案内が載っていた。
問題はその下だった。
「送迎バス降車場所:〇〇様宅前」
〇〇は、まぎれもなく我が家の住所だった。
しかも地図には、うちの庭先が分かりやすく丸で囲まれている。
「子供の安全にご協力を!」
私は思わず声に出した。
「じゃねーよ!」
うちの庭は道路に面しているとはいえ、私有地だ。
子どもたちが毎朝集まれば、騒音も出るし、ゴミも落ちる。
何より、万が一けがでもされたら、こちらに責任を押しつけられかねない。
すぐにチラシに載っていた幼稚園へ電話した。
すると担当者は、悪びれもせずに言った。
「以前から保護者の方が使いやすい場所だとおっしゃっていまして」
「許可は出していません」
私がそう言うと、相手は少し面倒くさそうな声になった。
「子どもの安全のためですので、地域の方にはご理解いただきたいんです」
その瞬間、腹の底から怒りが込み上げた。
子どもの安全を盾にすれば、他人の敷地を勝手に使っていいと思っているのか。
私は翌日、チラシを持って幼稚園を訪ね、園長に直接抗議した。
「今後、うちの敷地を降車場として記載したり、使用したりした場合は、警察と市役所に相談します」
園長は最初こそ曖昧に笑っていたが、無断使用の証拠としてチラシを見せると、ようやく顔色を変えた。
数日後、訂正版のチラシが配られ、うちの住所は消えていた。
けれど私は門の前に、防犯カメラ作動中の札を出した。
善意は、強制された瞬間に迷惑になる。
地域協力とは、他人の庭を勝手に使うことではない。