深夜のタクシーで86万円請求された私、スマホで走行履歴を確認した瞬間“異常な遠回り”に気づいた
2026/05/12

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終電は、
もう終わっていた。

その日は出張帰り。

駅に着いた時には深夜を回っていて、
ホテルに泊まるか迷った。

でも、
どうしてもその日のうちに帰りたかった。

仕方なく、
駅前でタクシーを拾った。

「○○市までお願いします」

運転手はバックミラー越しに、
じっとこちらを見た。

「距離ありますけど、大丈夫ですか?」

「ええ、前にも何回か乗ってるので」

実際、
過去にも同じ区間を利用したことがある。

高額なのは分かっていた。

でも、

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せいぜい三十万円前後だった記憶だ。

運転手は小さく頷き、
車を走らせた。

最初は、
特に違和感はなかった。

高速に乗り、
夜の道路をひたすら進む。

街灯だけが流れていく。

だがしばらくして、
私は妙な感覚を覚えた。

「あれ……?」

見覚えのないインターを通ったのだ。

私は聞いた。

「今どこ通ってます?」

運転手は淡々と答えた。

「こっちの方が早いんですよ」

その時は、
まだ疑わなかった。

深夜だし、
工事や渋滞回避かもしれない。

でもその後も、

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知らない道が続いた。

高速を降りて、
また別の高速へ。

どう考えても、
遠回りしているようにしか見えない。

私は言った。

「このルート、
いつもと違いますよね?」

すると運転手は、
少し笑いながら言った。

「夜は変わるんですよ」

その笑い方に、
妙な違和感が残った。

でも、
疲れていた私は、
それ以上追及しなかった。

そして数時間後。

ようやく目的地に到着した。

私は財布を出しながら、

何気なくメーターを見た。

次の瞬間、
頭が真っ白になった。

『860,940円』

「……は?」

思わず声が漏れた。

八十六万?

意味が分からなかった。

私は運転手へ言った。

「これ、間違ってません?」

運転手は平然としていた。

「メーター通りです」

私は強めの口調になった。

「前に同じ距離乗った時、
三十万くらいでしたよ?」

運転手は肩をすくめた。

「遠回りしてませんし」

——その瞬間、
確信した。

おかしい。

私はスマホを取り出した。

地図アプリを開き、
走行履歴を確認する。

そして、
思わず笑ってしまった。

「これ、

通常の倍以上走ってますよ」

画面を見せる。

明らかに不自然なルートだった。

普通なら絶対通らない道。

無駄に迂回している箇所。

私は静かに言った。

「警察呼びますね」

その瞬間。

運転手の顔色が変わった。

「いや、それは……」

「説明できますよね?」

沈黙。

数分後、
警察が到着した。

事情を説明し、
スマホの履歴を見せる。

警察官も、
途中から表情を変えた。

「……これ、
おかしいですね」

さらにメーター履歴を確認したあと、
警察官が言った。

「このメーター、
前の乗客の走行距離がリセットされてません」

「……え?」

つまり——

前の客の料金が、
そのまま加算されていた。

さらに、
遠回り分まで上乗せ。

結果、
八十六万円。

運転手は俯いたまま、
小さく言った。

「……ミスです」

私は思わず笑った。

「ミスで86万になるんですか?」

返事はなかった。

最終的に、
正しいルートで再計算され、
料金は約32万円になった。

私はその金額だけ支払い、
車を降りた。

夜風が妙に冷たかった。

歩きながら、

ふと思った。

もし、
あの時何も言わなかったら。

もし、
スマホを見なかったら。

もし、
“疲れてるからいいや”で済ませていたら。

あの八十六万円は、
そのまま請求されていたのかもしれない。

世の中で一番怖いのは、
高額請求じゃない。

遠回りでもない。

「おかしい」と気づけなくなることだ。

それ以来、
私はタクシーに乗る時、
必ず地図を開くようになった。

そして——

メーターを、

無条件では信じなくなった。

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