NHKの訪問は、夕方の静けさを破るように突然やってきた。
「受信料のご案内です。テレビをお持ちでしたらご契約をお願いします」
玄関先でそう告げる職員に、私ははっきりと答えた。
「テレビはありません」
しかし相手は一歩も引かない。
「確認のため、お部屋の中を見せていただけますか?」
少し迷ったが、私はドアを開けた。
「どうぞ?」
リビング、寝室、キッチン。物は少なく、どこにもテレビらしきものはない。NHK職員は慎重に確認していく。
だが、ある場所で足が止まった。
「……えっ」
その視線の先は、机の上に置かれた一台のノートPCだった。
私は思わず振り返る。
「えっ、何か問題あります?」
職員はしばらく無言のままPC画面を見つめていたが、やがて小さく首を振った。
「いえ……これは受信設備には該当しません」
その言葉に、今度は私の方が固まった。
「じゃあ……本当に?」
職員は気まずそうに資料をしまい、深く頭を下げた。
「失礼しました。契約の必要はありません」
ドアが閉まったあと、部屋には妙な静けさだけが残った。
そして翌日、ポストには一通の“確認結果通知”が入っていた。そこに書かれていたのは、予想もしなかった一文だった──「受信設備なし、契約対象外」。